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伊豆七島はどうやって行く?大型客船と高速船の違いは?
記事更新日: 2019-07-02
大型客船と高速ジェット船はどこが違う?
伊豆七島には、三宅島・御蔵(みくら)島・八丈島のように大型客船でなければ海から行けない島がありますが、大島や神津(こうづ)島へは高速ジェット船(以下、ジェット船)でも行くことができます。
大型客船と高速ジェット船は、どちらも港区の「竹芝客船ターミナル」から乗り込める、同じ「船」というタイプの乗り物ですが、この二つにはいくつもの違いがあります。
料金や所要時間、性能や航路、そして船内でのすごし方など、知っておきたい重要なポイントを詳しくご説明します。
違い1 船の性能・構造
大型客船は、ごく普通に海中のスクリューを回して進む船です。巨大ではあっても、小さなサイズの船と基本的な仕組みは変わりません。
現在、「竹芝~神津島」航路で使われている「さるびあ丸」の全長は約120mで、垂直に立てると東京タワーの1/3をすこし越えるほどの大きさです(※他にたとえるなら、茨城県の牛久大仏が台座込みでちょうど120mです)。
定員は1,546人と、400~500人乗りの大型ジェット機よりも、ずっと多くの人々を乗せることができます。
「竹芝~八丈島」間を航行している「橘(たちばな)丸」も同じく120m級の大きな船で、こちらの定員は(八丈島まで)約600人、または(御蔵島まで)1,000人となっています。
最高速度は、どちらもおよそ時速40km。船は遠くから見ていると速度がわかりにくく、遅いイメージもありますが、本当にゆっくり動いているわけではありません。
一方、ジェット船の全長は約27m、定員は254名です。
こちらは8~10階建てのビルと同じぐらいで、小さな漁船などに比べれば十分大きいのですが、それでも120m級の大型客船と比べると1/4ほどのサイズになります。
この船を開発したのは、海や船とは無縁とも思えるアメリカの航空機メーカーです。ジェット船にはジェットエンジンが搭載されていて、それが海水を勢いよく吹き出し、その力で船体を浮き上がらせます。飛行機のように空へ舞い上がるほどではないものの、海面のわずかに上を滑るように飛ぶ状態になるわけです。
停泊している時や、助走のような段階では一般的な船のように船体の下部が水中にありますが、加速していくと水中翼と呼ばれる部分だけを水中に残し、船体が海面から浮き上がります。
こうして水の抵抗を受ける部分を最小にすることで、時速約80kmというスピードと、小さな波を乗客に感じさせない安定した航行を両立しています。
ただし、巨大な船に乗っていれば気づかないような波も、小舟にとっては危険なものになります。
「海面のうねりが激しくなってきた時、どこまで耐えられるか」ということを比べると、大きさと重さのある大型客船が有利です。そうした厳しい状況でなければ、ジェット船でも揺れの少ない快適な航行を楽しむことができます。
違い2 速度・所要時間
「ジェット船:時速80km」「大型客船:時速40km」という最高速度の違いによって、目的の島への所要時間はどれほど変わるのでしょうか?
たとえば竹芝から大島へ行く場合、ジェット船の所要時間は最短で約1時間45分です。それに対し、大型客船はその2倍の約4時間……ではなく、約6時間かかります(※乗船の時期・便により、ジェット船は数十分、大型客船は2時間ほど増えることがあります)
これは大型客船が夜の22時や23時頃に出港し、翌朝の5時や6時といった適切な時間に島に着くよう、調整しながら進む夜行便だからです。
竹芝発の大型客船には朝や昼に出る便は無く、必ずこの夜の便に乗ることになります。なお、帰りは午前~昼すぎに島を出る昼行便です。行きとは逆のルートを通るため、竹芝に近い島ほど出港時間が遅くなります。
(竹芝からジェット船で行ける、最も遠い地点の)神津島でも、所要時間は3時間10分前後。大型客船では約10時間です(※どちらも最速の時期・便の場合)。
このように、片道の時間が短いジェット船は便数が多く、たとえば「竹島~大島」間は1日5便となる時期もあります。これなら出発のタイミングを柔軟に設定することができますし、日帰りでの旅行も考えられるでしょう。
距離の離れている神津島は1日1便が基本ですが、利用者の増える夏などは1日2便に増え、こちらも利用しやすくなります。
数字を見ると、ジェット船と大型客船には大きな差があるように思えますが、船内でのすごし方が違うため、「所要時間が3倍だから、3倍ストレスを感じる」とは言い切れません。
また、「速度の遅い大型客船の方が、(前日の夜に乗船すれば)島への到着時刻は早くなる」ということも覚えておきたいポイントです。
違い3 出発地点・航路
漫画の中の地図で示されているように、大型客船を利用すれば、すべての島に行くことができます。
ただし、竹芝から三宅島・御蔵島・八丈島へ行く便は、大島や利島へは立ち寄りません(※夏やゴールデンウィークなど、一部の時期は島からの帰りの便のみ大島に立ち寄ります)。
また、大島から利島(りしま)・新島(にいじま)などへ向かう便も、神津島が終点となり、三宅島や八丈島まで行くことはありません。
ジェット船で行けるのは、大島・利島・新島・式根(しきね)島・神津島です。
乗船する便により、すべての島を経由することもありますし、いくつかの島を通過することもあります。また、時期によっては途中の島までしか行かない便も登場します。「大島まで」ということもありますから、時刻表でよく確認しておきましょう。
また、大島の前に神奈川県の久里浜へ立ち寄る便もあり、「久里浜+すべての島」が最も所要時間の長い便となります。
ジェット船の出発地点は静岡県の熱海にもあり、大島(※一部の時期には大島+神津島)へ行く便が出ています。こちらも、便によっては大島の前に伊東や稲取(いなとり)に立ち寄ります。早ければ45分ほどで大島に着きますから、自宅から熱海へのアクセスが良い場合は、「電車+ジェット船」という方法を選ぶことで船内ですごす時間を短縮できます。
大型客船にも、伊豆半島先端の下田からの便があります。こちらは9時30分に出港する昼行便で、やはり1日1便です。
こちらは、
月・木・土曜日:下田→神津島→式根島→新島→利島→下田(※南から北へ)
火・金・日曜日:下田→利島→新島→式根島→神津島→下田(※北から南へ)
水曜日:運休
という方式のため、曜日によっては下田から2時間30分ほどで神津島へ行くことができます。
ただし、東京駅から下田駅までは新幹線を利用しても3時間弱・約6千円かかりますし、朝一番の列車でも、駅への到着が出港ギリギリの時刻(またはそれ以降)となるため、熱海からのジェット船のように(=船での移動時間や費用の一部を電車に割り当てるように)使うことはできません。
たとえば、「伊豆を旅行している時に、ふと神津島や式根島へ行きたくなった」というように、すでに下田付近にいることが条件となります。
違い4 船内の様子・すごし方
2階建てのジェット船の中は、ほとんどが座席で埋められていて、他にはトイレと自動販売機ぐらいしかありません。外に出ることもできないため、基本的には指定の座席に座ったまま、目的の島への到着を待つことになります。バスや電車、飛行機などに近いスタイルです。
大型客船は5~6階層に分かれていて、トイレと自販機、レストラン、シャワールーム、そして特等から2等までの各種客室などが配置されています。こちらはデッキに出ることもでき、潮風を感じながら大海原を一望できます。客室には、次の表のような種類があります。
等級 | 特徴 |
特等 | ベッドやテレビなどが設置されている、ホテルの一室のような部屋。 |
特1等 | テーブルやテレビと、省スペースな2段ベッドを備えた部屋。 |
1等 | 複数の布団セットが用意された部屋。 |
特2等 | 特1等から2段ベッド以外の物やアメニティを省いた部屋。 |
2等 | 広い大部屋。船により、リクライニングのできる「椅子席」があることも。 |
1等は2等の約2倍、特等は3倍弱の料金となっていますが、「動くホテル」気分を味わえます。すこしだけ豪華にしたい時には、特1等・特2等という中間の選択肢が役立ちます。
大型客船が島に到着するまでは、こうした船室で休む(または眠る)、あるいは船内で食事をする・デッキへ出るなど、さまざまな形で自由にすごせます。
ジェット船と同じ状態で6時間や10時間待ち続けるのは大変ですが、このような状態なら、意外に早く時が流れるように感じられるのではないでしょうか。
違い5 料金
最後はジェット船と大型客船の料金の違いを見てみましょう。どちらも、時期によって多少変わります。
2019年の竹芝→大島の運賃(大人1名・片道)
6月 | 7月 | 8月 | |
ジェット船 | 7,300円 | 8,430円 | 8,540円 |
大型客船 2等 |
4,510円 | 5,640円 | 5,710円 |
特2等 | 6,760円 | 8,450円 | 8,560円 |
1等 | 9,020円 | 11,270円 | 11,420円 |
特1等 | 10,820円 | 13,520円 | 13,700円 |
特1等 | 12,630円 | 15,780円 | 15,980円 |
2019年の竹芝→神津島の運賃(大人1名・片道)
6月 | 7月 | 8月 | |
ジェット船 | 9,900円 | 11,510円 | 11,660円 |
大型客船 2等 |
6,430円 | 8,040円 | 8,140円 |
特2等 | 9,650円 | 12,060円 | 12,220円 |
1等 | 12,860円 | 16,080円 | 16,290円 |
特1等 | 15,430円 | 19,300円 | 19,550円 |
特1等 | 18,000円 | 22,510円 | 22,800円 |
新島や式根島は、この中間の金額となります。表の内容を簡単にまとめると、「ジェット船は大型客船の2等よりも3,000円ほど高く、特2等と同じぐらい」ということです。
もし「大型客船での船旅に興味はあるが、大部屋で眠れるか不安」という場合には、特2等を選べば、ジェット船とほぼ同じ料金で2段ベッドを使って眠ることができます。
往復で考えると、差額は約6,000円になります。7~8月の大型客船・2等の大島までの往復は約11,500円ですから、ジェット船で大島へ2回遊びに行くと、大型客船・2等の1往復分を消費するわけです。
たとえ1回しか行かないとしても、(大人1名につき)約6,000円の余裕ができれば、宿や観光をすこし豪華にすることもできます。逆に、その辺りを多少我慢すれば、短時間で移動が終わります。旅行の目的や計画から、どちらが良いかを考えて選びましょう。
なお、宿泊費については、島での宿と往復のジェット船または大型客船(あるいは、片道ずつの組み合わせ)がセットになっている、旅行会社の伊豆七島ツアーを利用することで節約できます。
※本記事内の情報は、すべて2019年6月時点のものです。
出港時刻や運賃などは今後変更される可能性があります。必ず、最新の情報をご確認ください。
組み合わせて利用するという方法も!
このように、大型客船とジェット船の乗船体験はまったく別物です。
どちらにするか迷った時、費用や所要時間といった一つのポイントだけを見て即決してしまうと、実際に乗船した際に不満を感じてしまうかもしれません。大型客船とジェット船の特徴をよく見比べながら考えていきましょう。
もし両方に魅力を感じるなら、無理にどちらか一方に決める必要はありません。
「早朝から行動したいから、行きだけは大型客船」「夜の出発は無理だが、帰りは急がないから、デッキで海を見ながらのんびり行きたい」というように、条件や目的を考えながらジェット船と大型客船を組み合わせることで、旅の可能性が広がります。
ジェット船と大型客船のメリットを活かし、豊かな自然の待つ伊豆七島への旅行をお楽しみください。